「このまま今の会社で人事を続けていていいのだろうか」——そんな漠然とした不安を感じたことはないでしょうか。
人事職は企業の根幹を支える重要なポジションでありながら、自身のキャリアについては後回しにしがちな方が多いように感じます。HR総研の調査によると、人事職として転職経験がある人は全体の**33%にとどまり、従業員1,001名以上の大企業ではわずか14%**という結果も出ています。
出典:HR総研(HRプロ)
しかし、人事を取り巻く環境は大きく変化しています。今こそ、自分の市場価値とキャリアの選択肢を見つめ直す時期かもしれません。
人事職の転職市場|今、企業が求める人材像の変化
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人事職の転職市場は、現在売り手市場が続いています。MS-Japanの市場レポートによると、人事・総務の求人倍率は2021年から右肩上がりで推移し、2024年も1倍超の状態が続く見込みです。
ただし、すべての人事経験者に門戸が開かれているわけではありません。人事・総務求人のうち**「経験者募集」が86.4%を占め、未経験OKの求人は13.6%**にとどまります。つまり、経験者にとっては有利な市場である一方、どのような経験を積んできたかが厳しく問われる状況とも言えます。
出典:MS-Japan
企業が求める人材像も変化しています。従来の労務管理や採用実務だけでなく、人事システムの導入・運用、従業員エンゲージメント向上、労務コンプライアンス対応など、IT×人事の専門性を持つ人材へのニーズが高まっています。
また、HRBPへの注目も見逃せません。パーソル総合研究所の調査では、日系企業のHRBP設置率は11.3%、事業部人事は**27.5%でしたが、『人事白書』2024では「自社にHRBPがいる」企業が16.6%に増加。さらに11.8%**が今後設置予定と回答しており、戦略人事へのシフトが着実に進んでいることがわかります。
出典:日本の人事部
人事経験を活かせる5つの転職先とその特徴
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人事経験者の転職先はどこが多いのでしょうか。JACの調査によると、人事出身者の転職先は以下のような分布になっています。
転職先 | 割合 |
人事・労務 | 60.1% |
経理・財務 | 10.2% |
総務・広報 | 8.6% |
経営・事業企画 | 6.4% |
コンサル・アドバイザリー | 2.5% |
1. 同業種・異業種の人事職 最も多いのは、やはり人事職への転職です。同じ人事でも、企業規模や業界が変われば業務内容は大きく異なります。スタートアップでは制度設計から携われる機会が多く、大手企業では専門領域を深掘りできる傾向があります。
2. 経営企画・事業企画 人事で培った組織理解や経営層との折衝経験は、経営企画でも活かせます。特に人員計画や組織設計に関わってきた方は親和性が高いでしょう。
3. 人事コンサルタント 事業会社での実務経験を武器に、コンサルティングファームへ転身するケースも増えています。人事コンサルティング市場は2024年の737.5億米ドルから2029年には1,040.2億米ドルへ成長が見込まれており、グローバルでも需要は拡大傾向にあります。
4. 総務・広報 管理部門全般を経験したい方には、総務や広報への転身も選択肢になります。人事との兼務経験がある方は特にスムーズに移行できるでしょう。
5. HRテック企業 人事システムやタレントマネジメントツールを提供する企業では、ユーザー視点を持つ人事経験者が重宝されます。カスタマーサクセスや導入支援など、経験を直接活かせるポジションが増えています。
人事転職で年収アップを実現するために押さえたいポイント
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人事職の年収は、企業規模や業界、役職によって大きな幅があります。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査に基づくと、人事職の平均年収は514万円とされています。一方、JAC Recruitmentの登録者ベースでは、ハイクラス人事職の平均年収は1,050.3万円、ボリュームゾーンは800〜1,300万円と、経験やポジションによって大きな差が生まれています。
業界別に見ると、メディカル・バイオが1,009.1万円、金融が869.0万円、建設・不動産が848.8万円、商社が843.0万円、IT・通信が814.8万円と、業界選びが年収に直結することがわかります。
年収アップを実現するためのポイントは3つあります。
専門領域の確立が第一です。採用、労務、制度設計、人材開発など、特定領域での深い専門性は市場価値を高めます。MS-Japanのレポートでは、30代×大規模上場企業の中間管理職で年収中央値753万円、40代では798万円というデータがあり、専門性と役職の掛け合わせが年収に反映されています。
出典:MS-Japan
成長業界への移動も有効です。同じ人事経験でも、成長産業に身を置くことで待遇面の改善が期待できます。
マネジメント経験の積み重ねも重要です。CHROや人事部長といった経営に近いポジションを目指すなら、チームマネジメントの実績は不可欠です。
人事のキャリアで差がつく|選ばれる人材になるための準備
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転職を成功させている人事経験者には、いくつかの共通点があります。
まず、転職活動の期間を適切に見積もっていることです。MS-Japanの調査によると、人事転職決定者の平均活動日数は100.6日、中央値は62.5日で、ボリュームゾーンは31〜60日となっています。焦らず、しかし計画的に動くことが大切です。
出典:MS-Japan
次に、自分の経験を言語化できていることです。「採用を担当していました」ではなく、「年間50名の中途採用を担当し、採用単価を20%削減しながら定着率を改善」のように、具体的な成果を数字で示せる準備が必要です。
そして、キャリアの方向性を明確にしていることです。スペシャリストとして専門性を極めるのか、ゼネラリストとして経営に近づくのか。HRBPのように事業と人事を橋渡しする役割を目指すのか。方向性が定まっていると、企業とのマッチング精度も高まります。
転職決定者のうち**経験者が86.3%**を占める市場では、何を経験してきたかだけでなく、その経験をどう活かしたいかを語れることが差別化につながります。
出典:MS-Japan
まとめ
人事職の転職市場は売り手市場が続いており、経験者にとってはチャンスの多い環境です。しかし、企業が求める人材像は変化しており、従来の実務経験だけでなく、戦略人事やIT活用といった新しいスキルへのニーズが高まっています。
年収アップを実現するには、専門領域の確立、成長業界への移動、マネジメント経験の積み重ねがポイントになります。そして何より、自分のキャリアの方向性を明確にし、経験を言語化できる準備が欠かせません。
転職は情報戦です。自分一人では見えない選択肢や、客観的な市場価値を把握することが、納得のいくキャリア選択につながるのではないでしょうか。
