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建築業界の転職は本当に難しいのか?設計・企画職が見落としがちなキャリアの可能性

建築業界の転職は本当に難しいのか?設計・企画職が見落としがちなキャリアの可能性

目次

設計職のキャリアは「同業界内」に限られるのか?

「建築の経験は、結局建築でしか活かせない」——そう思い込んでいないでしょうか。

建築・土木技術者等の有効求人倍率は5.98倍(令和6年12月時点)に達しており、求職者1人に対して約6件の求人がある状況です。建設業全体の新規求人数も2024〜2025年を通じて60,000〜70,000件前後で推移しており、市場としての需要は堅調と言えます。

出典:ガテン職エン・ジャパン

しかし、ここで一つ考えてみてください。求人が多いことと、自分に合った転職先が見つかることは、必ずしもイコールではありません。設計事務所から設計事務所へ、ゼネコンからゼネコンへ——同じ業界内での転職を繰り返すだけでは、キャリアの幅が広がらないと感じている方も多いのではないでしょうか。

実は、建築系ホワイトカラーのスキルは、本人が思っている以上に多様な領域で評価される可能性があります。問題は、その可能性に気づく機会が少ないことかもしれません。

建築の専門性はどこまで他領域で評価されるのか?

「設計しかやってこなかったから、他の仕事はできない」という声をよく耳にします。しかし、本当にそうでしょうか。

建築設計の仕事を分解してみると、そこには多様なスキルが含まれていることがわかります。複数のステークホルダーとの調整力、プロジェクト全体を俯瞰するマネジメント視点、法規制や技術的制約の中で最適解を導く問題解決能力——これらは建築業界に限らず、多くの業界で求められる汎用的な能力です。

たとえば、不動産デベロッパーの企画職、建築コンサルタント、PM(プロジェクトマネージャー)、さらにはIT業界のプロダクトマネジメントなど、建築で培った思考法が活きる領域は想像以上に広がっています。施工管理経験者のスキルが他職種でも評価されやすい傾向があるとされていますが、これは設計職にも当てはまる部分が少なくありません。

出典:ガテン職

ただし、注意すべき点もあります。自分のスキルを「建築設計ができます」という表現のままでは、他業界の企業には伝わりにくいものです。自分の経験を抽象化し、異なる文脈で説明できるかどうかが、キャリアの選択肢を広げる鍵になります。

デベロッパーやコンサルへの転身で何が変わるのか

設計職からのキャリアチェンジ先として、デベロッパーや建築コンサルを検討する方は少なくありません。では、実際に何が変わるのでしょうか。

まず年収面を見てみましょう。一級建築士の平均年収は企業規模によって大きく異なります。大企業(1,000人以上)では約800万円超、中堅企業(100〜999人)では約617万円、小規模(10〜99人)では約568万円とされています。また、設計事務所の中でも日本設計のような大手では平均年収が約948万円という推計もあります。

出典:日建学院OpenWork

構造設計・工事監理の求人では年収600万円〜1,100万円程度のレンジが提示されるケースもあり、同じ建築領域でも所属する組織によって待遇は大きく変わります。

出典:建転

しかし、年収だけで転職先を判断するのは危険です。デベロッパーに転身すれば、設計の「作り手」から事業の「企画者」へと立場が変わります。コンサルであれば、クライアントへの提案や課題解決が主な役割になります。自分が何を実現したいのか、どんな働き方を求めているのかを明確にしないまま転職すると、「思っていた仕事と違う」というミスマッチに陥りやすくなります。

建築系ホワイトカラーが転職で見落としやすい落とし穴とは

建築系ホワイトカラーの転職で、よく見られる落とし穴があります。

一つは、「経歴の延長線上」でしか転職先を探さないことです。設計事務所にいたから次も設計事務所、ゼネコンにいたから次もゼネコン——この発想自体は自然ですが、それだけでは自分のキャリアの可能性を狭めてしまいます。建築士全体の平均年収は約632.8万円とされていますが、この数字は業界内での選択肢に留まった場合の一つの目安に過ぎません。

出典:ガテン職

もう一つは、「求人票の条件」だけで判断してしまうことです。年収や勤務地、企業規模といった条件は確かに重要です。しかし、その企業が自分の志向やキャリア観と合っているかどうかは、求人票だけでは見えてきません。特に建築系の専門職は、自分のスキルや経験を評価してくれる企業と、単に「建築士の資格を持っている人」を求めている企業とでは、入社後の活躍の幅が大きく異なります。

そして最も根本的な問題は、**「自分の市場価値を正しく把握できていない」**ことではないでしょうか。建築業界は専門性が高いがゆえに、業界外からの評価基準が見えにくい傾向があります。自分では「設計しかできない」と思っていても、外から見れば非常に希少な経験を持っていることも少なくありません。

まとめ

建築業界の転職市場は、求人倍率だけを見れば売り手市場と言える状況です。しかし、「求人が多い=良い転職ができる」とは限りません。

大切なのは、以下の視点を持つことではないでしょうか。

  • 自分のスキルを「建築」という枠に閉じ込めず、汎用的な強みとして捉え直す
  • 年収や条件だけでなく、自分の志向やキャリア観との一致を重視する
  • 経歴の延長線上だけでなく、思いもよらなかった選択肢にも目を向ける

転職は情報戦です。特に専門性の高い建築系ホワイトカラーにとっては、自分では気づかない可能性を示してくれる存在が重要になります。従来の転職サイトでは、職種や業界で求人を絞り込むことが一般的ですが、それでは見えない選択肢が数多く存在します。

記事監修者:渡辺 貴明

メルセネール株式会社取締役。東京工業大学工学部卒業。大学卒業後、独立系コンサルティングファームにて製造業のクライアントを中心に業務改革支援に従事。その後、アビームコンサルティング株式会社の戦略部門に転じ、経営戦略・事業戦略策定やM&A、新規事業開発、組織/人材開発に従事。メルセネール株式会社では事業責任者を務める。

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