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法務の転職は「専門性の延長」だけでいいのか?見落とされがちなキャリアの選択肢

法務の転職は「専門性の延長」だけでいいのか?見落とされがちなキャリアの選択肢

目次

法務経験者が「次のキャリア」に迷うのはなぜか?

法務職の有効求人倍率は0.59倍(令和6年度)とされており、求職者1人に対して1件に満たない求人数という状況です。一方で、dodaの転職市場予測では「2025年下半期、法務職の求人数は増加」という見通しも示されています。市場環境は決して悲観的なものばかりではありません。

出典:職業情報提供サイト jobtagdoda

しかし、ここで注目すべきデータがあります。法務・知的財産・特許職種から転職した人のうち、次に就いた職種も「同職種」だった割合は79.3%に上ります。総務への転職が5.5%、経営企画が2.8%、経理財務・人事がそれぞれ**1.8%**という内訳を見ると、法務経験者の多くが「法務から法務へ」という同一職種内での転職を選んでいることがわかります。

出典:doda

この数字は何を意味しているのでしょうか。法務という専門性の高さゆえに、他のキャリアパスが見えにくくなっているのかもしれません。あるいは、自分のスキルが法務以外でどう評価されるかがわからず、踏み出せないでいる方も多いのではないでしょうか。

法務スキルは「契約書チェック」だけではないのか?

「法務は契約書を見る仕事」「リスクを指摘するのが役割」——こうした認識は、法務の仕事の一面しか捉えていません。

法務の業務を分解してみると、そこには多様なスキルが含まれていることに気づきます。複雑な契約条件を整理し本質的なリスクを見抜く分析力、社内の各部門と交渉しながら落としどころを見つける調整力、法的リスクを経営陣にわかりやすく伝える翻訳力、そして不確実な状況下で判断を下す意思決定支援能力——これらは「契約書チェック」という言葉では到底表現しきれないものです。

特にM&A法務やコンプライアンス、知財戦略に関わってきた方であれば、経営判断に直結する局面を数多く経験してきたはずです。この経験は、法務という枠を超えて評価される可能性を秘めています。

問題は、こうしたスキルを「法務経験があります」という一言で済ませてしまっていることにあるのかもしれません。自分の経験を抽象化し、ビジネス全体の文脈で語れるようになったとき、キャリアの選択肢は想像以上に広がる可能性があります。

「守りの法務」から「攻めの法務」へ転身できるのか

「法務はどうしても守りの仕事になりがち」——こうした悩みを抱えている方は少なくありません。では、より経営に近い「攻め」の役割へ転身することは可能なのでしょうか。

年収データから見てみましょう。企業法務担当の平均年収は約481.4万円とされる一方、dodaのデータでは法務・知財・特許職種の平均年収は678.9万円、さらにJACの支援実績では法務職全体の平均が896.5万円という数字も示されています。この幅の大きさは、同じ「法務」でも担う役割によって評価が大きく異なることを示唆しています。

出典:職業情報提供サイト jobtagdodaJAC Recruitment

さらに詳しく見ると、メンバー(課長未満)の平均年収は約784.9万円、管理職(課長以上)になると約1,042.2万円、本部長クラスでは2,000万〜3,000万円を超える事例も存在します。法務としてのキャリアを積み上げていけば、CLO(最高法務責任者)やゼネラルカウンセルといった経営層に近いポジションへの道も開かれています。

出典:JAC Recruitment

ただし、ここで考えるべきことがあります。「守り」から「攻め」への転身は、単に役職が上がることだけを意味するのでしょうか。契約法務から事業開発支援へ、コンプライアンスからリスクマネジメント全般へ、あるいは法務から経営企画へ——役割の質的な変化を伴うキャリアチェンジも選択肢として存在します。自分が何を実現したいのかを明確にしないまま「攻めの法務」を目指しても、転職後のミスマッチにつながりかねません。

法務経験者が転職で見落としやすい落とし穴とは

法務経験者の転職において、いくつかの典型的な落とし穴があります。

一つは、「専門性」に固執しすぎることです。法務という専門性を武器にすることは重要ですが、それだけに頼ると視野が狭くなりがちです。法務・知財・特許職種の年収分布を見ると、**400万円台が19%**を占める一方で、**1,000万円以上も14%**存在します。この差は、単なる経験年数ではなく、どのような役割を担い、どのような価値を提供しているかによって生まれているものです。

出典:doda

もう一つは、「弁護士資格の有無」を過度に気にすることです。確かにインハウスローヤーとしてのキャリアを目指すなら資格は重要ですが、企業法務の現場では資格以上に実務経験や業界知識が評価されるケースも少なくありません。資格がないからといって、キャリアの可能性を自ら狭めてしまうのはもったいないことです。

そして最も見落とされがちなのが、**「自分の志向を言語化できていない」**という問題です。「法務としてキャリアアップしたい」という漠然とした希望だけでは、自分に合った転職先を見つけることは難しいものです。専門性を深めたいのか、マネジメントに進みたいのか、経営により近い立場で働きたいのか——自分の志向を明確にすることが、転職成功の鍵になります。

まとめ

法務の転職市場は、求人倍率だけを見れば厳しい状況に見えるかもしれません。しかし、それは「法務から法務へ」という同一職種内の転職に限定した場合の話です。

大切なのは、以下の視点を持つことではないでしょうか。

  • 法務経験で培ったスキルを「契約書チェック」に限定せず、ビジネス全体で活きる強みとして捉え直す
  • 「守り」か「攻め」かという二項対立ではなく、自分が実現したい役割を明確にする
  • 資格や経験年数だけでなく、どんな価値を提供できるかを言語化する

転職は情報戦です。特に法務のように専門性の高い職種では、自分では気づかない可能性を示してくれる存在が重要になります。従来の転職サイトで「法務」と検索するだけでは、経営企画やリスクマネジメント、事業開発といった法務経験が活きる周辺領域の選択肢が見えにくいものです。

記事監修者:渡辺 貴明

メルセネール株式会社取締役。東京工業大学工学部卒業。大学卒業後、独立系コンサルティングファームにて製造業のクライアントを中心に業務改革支援に従事。その後、アビームコンサルティング株式会社の戦略部門に転じ、経営戦略・事業戦略策定やM&A、新規事業開発、組織/人材開発に従事。メルセネール株式会社では事業責任者を務める。

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