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「転職すればキャリアが開ける」は本当か?見落としがちな視点

「転職すればキャリアが開ける」は本当か?見落としがちな視点

目次

「キャリアのために転職する」という発想は正しいのか?

「今の会社にいてもキャリアが頭打ちになる」「転職しないと成長できない」。こうした考えから、転職を検討している方は多いのではないでしょうか。

転職を考え始めたきっかけとして、 「給与が低い・昇給が見込めない」が44% 、 「やりがい・達成感がない」が32% という調査結果があります。

出典:エン・ジャパン

これらの不満は、確かに深刻なものです。しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。「転職すればキャリアが開ける」という発想は、本当に正しいのでしょうか。

転職経験者の平均転職回数は 約2.23回 、 約8割が1回以上の転職経験がある と言われています。

出典:エキサイトニュース

転職が当たり前の時代になったのは事実です。しかし、「みんなが転職しているから」「転職がキャリアアップの手段だから」という理由だけで転職を選ぶのは危険ではないでしょうか。

転職はあくまで手段であり、目的ではありません。「キャリアのために転職する」のではなく、「自分のキャリアをどうしたいのか」を先に考える。この順番を間違えると、転職しても何も解決しない可能性があります。


なぜ転職してもキャリアの悩みが消えない人がいるのか?

転職後の満足度に関する調査を見ると、 「満足・どちらかといえば満足」と答えた人は約66.3% です。

出典:日本の人事部

一見、高い数字に見えます。しかし、別の調査では 「満足・おおむね満足」が約59.0% 、 「不満・やや不満」が16.8% 、そして 「全く後悔なし」と言い切れる人は約32.6% にとどまるというデータもあります。

出典:GradsGuide

つまり、 約67%の人が何らかの「思い残し」を抱えている のです。転職したにもかかわらず、完全に満足できていない人が大半を占めています。

なぜ、転職してもキャリアの悩みが消えない人がいるのでしょうか。

一つの理由は、「転職すること」自体が目的になってしまっているケースです。今の環境への不満から逃げるように転職を決めると、転職先でも別の不満が生まれます。環境は変わっても、自分自身が変わっていなければ、同じパターンを繰り返すことになります。

もう一つの理由は、「何を得たいのか」が曖昧なまま転職しているケースです。年収を上げたいのか、やりがいを求めているのか、ワークライフバランスを重視するのか。すべてを同時に手に入れるのは難しいにもかかわらず、漠然と「今より良くなるはず」と期待して転職すると、現実とのギャップに苦しむことになります。

転職はキャリアの悩みを解決する「魔法の杖」ではありません。この事実を理解しないまま転職を繰り返すと、キャリアが迷走するリスクすらあります。


キャリアを考えるうえで転職より先に問うべきこと

転職を考える前に、まず向き合うべき問いがあります。それは、「自分はどんなキャリアを歩みたいのか」という根本的な問いです。

問い1:今の不満は「環境」の問題か「自分」の問題か

給与への不満、やりがいの欠如、人間関係のストレス。これらは環境を変えれば解決するものでしょうか。それとも、どの環境に行っても付いてくる、自分自身の課題でしょうか。

「上司と合わない」という不満があったとして、それは上司個人の問題なのか、自分のコミュニケーションスタイルの問題なのか。「やりがいがない」と感じているのは、仕事内容の問題なのか、自分の仕事への向き合い方の問題なのか。この見極めを誤ると、転職先でも同じ壁にぶつかります。

問い2:「何を得たいのか」と「何を手放せるのか」

転職によって何を手に入れたいのかを明確にする必要があります。同時に、何を手放す覚悟があるのかも考えなければなりません。

年収アップを求めるなら、業務負荷が増える可能性を受け入れられるか。ワークライフバランスを重視するなら、キャリアアップのスピードが遅くなることを許容できるか。すべてを手に入れようとすると、結局何も得られないことになりかねません。

問い3:5年後、10年後にどうなっていたいのか

目の前の不満を解消することだけを考えていないでしょうか。キャリアは長期戦です。5年後、10年後にどんな自分でいたいのか。その姿から逆算したとき、今の転職は正しい選択と言えるでしょうか。

これらの問いに対する答えを持たないまま転職しても、キャリアの軸は定まりません。転職という行動に移る前に、まず自分自身と向き合う時間を取ること。それが、後悔のないキャリア選択への第一歩です。


転職がキャリアにプラスになる人・ならない人の違い

転職がキャリアにプラスになる人と、そうでない人がいます。その違いはどこにあるのでしょうか。

プラスになる人の特徴

転職がキャリアにプラスになる人は、「何のために転職するのか」が明確です。今の環境では得られない経験やスキルを、転職によって手に入れようとしている。その目的が具体的であればあるほど、転職先でも成果を出しやすくなります。

また、転職をキャリアの「手段」として捉えています。転職すること自体がゴールではなく、転職後に何を実現するかを見据えている。だからこそ、転職先でも主体的に動き、キャリアを積み上げていけるのです。

プラスにならない人の特徴

一方、転職がキャリアにプラスにならない人は、「今の環境から逃げたい」という動機が先行しています。不満を解消するための転職は、往々にして次の不満を生みます。

また、転職回数が増えることのリスクを軽視している傾向もあります。中途採用担当者の 77.6%が転職回数に懸念を持っている というデータがあり、20代では 「転職3回以上で採用を躊躇する」割合が66.4% にのぼります。

出典:マイナビキャリアリサーチLab

転職を繰り返すことで、「この人はまたすぐ辞めるのではないか」という懸念を持たれるリスクがあります。キャリアを積み上げるつもりが、逆に選択肢を狭めてしまう可能性もあるのです。

年代別に見ると、 25〜34歳で転職歴がない人は56.5% 、 35〜44歳では44.6% となっています。

出典:トライアロー

年齢が上がるにつれて転職経験者が増えるのは自然なことですが、「みんなが転職しているから自分も」という発想は危険です。転職がキャリアにプラスになるかどうかは、転職の「回数」ではなく「質」で決まります。


まとめ

キャリアと転職の関係について、いくつかの視点から問い直してきました。押さえておきたいポイントを整理します。

  • 転職理由の上位は「給与」「やりがい」だが、それらは本当に転職でしか解決できないのか問い直す価値がある
  • 転職後に「全く後悔なし」と言える人は約32.6%。約67%が何らかの思い残しを抱えている
  • 転職を考える前に「環境の問題か自分の問題か」「何を得て何を手放すか」を明確にすべき
  • 転職回数が増えると採用に懸念を持たれるリスクがあり、転職の「質」が重要

「転職すればキャリアが開ける」という考えは、必ずしも正しくありません。転職はあくまで手段であり、キャリアを良くするかどうかは、転職の目的が明確かどうか、自分自身のキャリア観が定まっているかどうかにかかっています。

大切なのは、「転職すべきか」を考える前に、「自分はどんなキャリアを歩みたいのか」を考えることです。その軸が定まれば、転職が正解か、今の環境で頑張ることが正解かは、自ずと見えてくるはずです。

そして、自分のキャリア観を明確にしたうえで転職を考えるなら、視野を広げてみることも大切です。

記事監修者:渡辺 貴明

メルセネール株式会社取締役。東京工業大学工学部卒業。大学卒業後、独立系コンサルティングファームにて製造業のクライアントを中心に業務改革支援に従事。その後、アビームコンサルティング株式会社の戦略部門に転じ、経営戦略・事業戦略策定やM&A、新規事業開発、組織/人材開発に従事。メルセネール株式会社では事業責任者を務める。

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