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財務への転職、「経理の延長」だと思っていないか?見落としがちな本質的な違いを問う

財務への転職、「経理の延長」だと思っていないか?見落としがちな本質的な違いを問う

目次

「経理ができるから財務もできる」は本当か?

経理の経験を積んできた人が、次のキャリアとして財務を目指すケースは少なくありません。「数字を扱う仕事だから、経理ができれば財務もできるだろう」——そう考える方もいるのではないでしょうか。しかし、ここで一度立ち止まって考えてみてください。経理と財務は、本当に同じ延長線上にある仕事なのでしょうか。

確かに、経理と財務はどちらも企業の「お金」に関わる仕事です。しかし、その役割は根本的に異なります。経理が「過去の取引を正確に記録し、報告する」ことを主な役割とするのに対し、財務は「将来に向けてお金をどう動かすか」を考える仕事です。

言い換えれば、経理は「後ろを向いた仕事」、財務は「前を向いた仕事」とも言えます。この違いを理解せずに財務への転職を目指すと、入社後に「思っていた仕事と違う」というギャップに直面する可能性があります。

経理のスキルは財務で活きる部分もありますが、それだけでは不十分です。財務には、経理とは異なる思考様式や視点が求められるという認識を持っているかどうかが、転職成功の分岐点になるかもしれません。


財務の仕事で問われるのは「記録」ではなく「意思決定」

では、財務の仕事とは具体的に何をするのでしょうか。「経理との違いがよく分からない」という声は多いですが、その本質的な違いは「意思決定への関与度」にあります。

財務の主な業務には、以下のようなものがあります。

  • 資金調達:銀行借入、社債発行、増資など、事業に必要な資金をどう集めるか
  • 資金管理:キャッシュフローの予測と管理、余剰資金の運用
  • 財務戦略:M&A、投資判断、資本構成の最適化
  • 予算管理:中長期の財務計画策定、各部門との調整
  • IR対応:投資家や株主への財務情報の開示・説明

これらの業務に共通するのは、「将来の経営判断に直結する」という点です。財務担当者は、経営陣と密に連携しながら、企業の成長戦略を資金面から支える役割を担います。

つまり、財務で問われるのは「数字を正確に処理する能力」よりも、「数字を使って意思決定を支援する能力」なのです。経理で培った正確性や細やかさは土台として重要ですが、それに加えて経営視点やビジネス感覚が求められる点が、財務という仕事の特徴ではないでしょうか。


未経験から財務を目指す人が見落としている視点

財務への転職を検討している方の中には、「経理経験がないと難しいのでは」と不安を感じている人もいるでしょう。確かに、経理や会計のバックグラウンドがあると有利な面はあります。しかし、未経験だからといって可能性が閉ざされているわけではありません。

ただし、未経験者が見落としがちな視点があります。それは、財務という仕事が「専門スキル」だけでなく「ビジネス理解」を強く求められるという点です。

財務の仕事では、数字の背景にある事業の動きを理解していなければ、適切な判断ができません。なぜこの投資が必要なのか、なぜこのタイミングで資金調達をするのか。こうした問いに答えるためには、事業戦略や市場環境への理解が不可欠です。

そのため、営業や事業企画など、ビジネスの最前線で経験を積んできた人が財務に転職し、活躍するケースも珍しくありません。「数字に強いこと」と「ビジネスを理解していること」の両方が揃って初めて、財務として価値を発揮できるのです。

また、財務職の年収は経験や役割によって大きく異なります。MS-Japanの調査によると、30代の財務職の年収は、中小企業の非管理職で 533万円、大手企業の非管理職で 650万円、管理職クラスになると 900〜1,000万円 程度まで上昇するとされています。

出典:MS-Japan 財務職の平均年収レポート 2025

さらに、JACリクルートメントのレポートでは、財務専門職の年収レンジは 600〜1,200万円、CFOやハイクラス層では 1,500万円以上 という水準も報告されています。

出典:JACリクルートメント 財務・経理の転職市場レポート

管理部門の中でも特に年収水準が高い領域であることは、財務への転職を検討する上で知っておきたいポイントです。ただし、それだけ求められるスキルや責任も大きいということでもあります。


財務でキャリアを築く人が持っている思考とは

財務に転職できたとしても、そこで長く活躍できるかどうかは別の話です。では、この領域で継続的に成果を出し、キャリアを築いている人には、どのような共通点があるのでしょうか。

一つ言えるのは、彼らが財務を「管理業務」ではなく「経営の意思決定を支える仕事」として捉えているということです。

財務の仕事は、資金繰りや予算管理といったオペレーション業務だけではありません。「この投資は本当にリターンを生むのか」「この資金調達のタイミングは適切か」「この事業にこれ以上の資金を投じるべきか」——こうした経営判断に対して、財務の視点から提言できるかどうかが、単なる担当者と経営パートナーとしての財務人材との違いを生んでいます。

現在、財務職の転職市場は「売り手市場」と言われています。パソナの調査によると、ハイクラス(年収700万円以上)の求人倍率は 2.56倍 と高水準であり、財務職はこの領域に多く含まれています。

背景には、IPO準備企業の増加や、資金調達の多様化、経営における財務戦略の重要性の高まりがあります。特にスタートアップやグロース企業では、財務人材の需要が急増しているとも言われています。

しかし、求人があるからといって誰でも活躍できるわけではありません。「今の業務をこなす」だけでなく、「企業価値の向上にどう貢献できるか」を常に意識できる人が、結果的にキャリアの選択肢を広げているのではないでしょうか。


まとめ

財務への転職は、経理の延長として捉えるだけでは成功しにくい領域です。しかし、財務という仕事の本質を理解し、自分の適性を見極めた上で臨めば、大きなキャリアアップの可能性がある職種でもあります。

  • 経理は「過去の記録」、財務は「将来の意思決定」——役割の本質が異なる
  • 財務で問われるのは数字の処理能力ではなく、経営判断を支援する能力
  • 未経験からの転職では、専門スキルだけでなくビジネス理解が重要
  • 長く活躍する人は、財務を「経営のパートナー」として捉えている

転職活動において大切なのは、「自分がなぜ財務を目指すのか」を深掘りすることです。経営に近いポジションで働きたいのか、専門性を極めたいのか。その答えが明確であればあるほど、面接での説得力も増し、入社後のギャップも小さくなるでしょう。

記事監修者:渡辺 貴明

メルセネール株式会社取締役。東京工業大学工学部卒業。大学卒業後、独立系コンサルティングファームにて製造業のクライアントを中心に業務改革支援に従事。その後、アビームコンサルティング株式会社の戦略部門に転じ、経営戦略・事業戦略策定やM&A、新規事業開発、組織/人材開発に従事。メルセネール株式会社では事業責任者を務める。

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