秘書経験者が「次のキャリア」に迷う本当の理由とは?
![]()
「秘書の経験を活かして転職したい」——そう考えたとき、具体的にどんな選択肢が思い浮かぶでしょうか。
秘書職の有効求人倍率は0.67倍(令和6年度・全国)とされており、求職者1人に対して1件に満たない求人数という状況です。これは他の職種と比較しても決して高い数字ではありません。秘書として転職を考えたとき、「選択肢が限られている」と感じる方が多いのも無理はないでしょう。
さらに興味深いデータがあります。秘書・受付職種への転職者のうち、前職も「秘書/受付」だった人の割合は30.5%に上ります。一般事務からの転職が8.9%、販売・接客からが**7.5%**という内訳を見ると、秘書経験者の多くが「秘書から秘書へ」という同一職種内での転職を選んでいることがわかります。
出典:doda
しかし、ここで立ち止まって考えてみてください。秘書としてのキャリアは、本当に「秘書を続けるか、辞めるか」の二択しかないのでしょうか。多くの秘書経験者が次のキャリアに迷う背景には、自分のスキルや経験の価値を正しく認識できていないという問題があるのかもしれません。
秘書のスキルは本当に「サポート業務」だけなのか?
![]()
「秘書はサポート役だから、自分で何かを動かす仕事ではない」——こうした認識を持っている方は少なくありません。しかし、果たしてそれは正確な理解でしょうか。
秘書の仕事を分解してみると、そこには多様なスキルが含まれていることに気づきます。経営層のスケジュールを最適化する判断力、社内外のステークホルダーとの調整力、機密情報を扱う中で培われる信頼構築能力、そして経営判断に必要な情報を整理し提供する情報編集力——これらは「サポート」という言葉で片付けられるものではありません。
特に役員秘書やエグゼクティブ秘書として経験を積んできた方は、経営者の思考プロセスや意思決定の現場を間近で見てきたはずです。この経験は、一般的なビジネスパーソンが得ることの難しい貴重な資産です。
問題は、こうしたスキルや経験を「秘書業務」という枠組みでしか説明できないことにあります。自分の経験を抽象化し、異なる文脈で語れるようになったとき、キャリアの選択肢は大きく広がる可能性があります。
秘書から経営に近づくキャリアパスは存在するのか
![]()
「秘書として経営者を支えてきたが、自分自身がより経営に近い立場で働きたい」——こうした志向を持つ方にとって、具体的なキャリアパスは存在するのでしょうか。
年収面から見てみましょう。秘書職全体の平均年収は約554.8万円とされています。一方で、エグゼクティブアシスタントのポジションでは600万〜1,000万円、さらには770万〜1,000万円といった年収レンジの求人も存在します。
この数字が示しているのは、秘書職の中でもポジションや役割によって大きな幅があるということです。単なるスケジュール管理や来客対応を超え、経営者の右腕として戦略的な業務を担うエグゼクティブアシスタントやChief of Staffといったポジションでは、求められる役割も報酬も大きく変わってきます。
また、秘書経験を活かしたキャリアチェンジの方向性として、経営企画、事業企画、広報、人事といった領域も考えられます。これらの職種では、秘書として培った調整力や情報編集力、経営視点での思考が評価される場面が少なくありません。
ただし、こうしたキャリアパスは自然に見えてくるものではありません。自ら情報を取りに行き、自分の可能性を広げる意識がなければ、「秘書から秘書へ」という選択肢しか見えないままになってしまいます。
秘書経験者が転職で陥りやすい落とし穴とは
![]()
秘書経験者の転職において、いくつかの典型的な落とし穴があります。
一つは、「求人票の職種名」だけで判断してしまうことです。「秘書」と書かれた求人だけを探していては、実質的に秘書と同等以上のスキルが求められる別職種の可能性を見逃してしまいます。たとえば、「エグゼクティブアシスタント」「社長室スタッフ」「経営企画アシスタント」といったポジションは、秘書経験が直接活きる領域です。
もう一つは、「サポート役」という自己認識から抜け出せないことです。転職活動において、自分を「誰かを支える存在」としてしかアピールできないと、キャリアの幅は広がりにくくなります。秘書として何を実現してきたのか、どんな価値を生み出してきたのかを言語化できるかどうかが、転職の成否を分けることも少なくありません。
そして最も見落とされがちなのが、**「自分の志向を明確にしないまま転職活動を始めてしまうこと」です。秘書・受付職種への転職者のうち、転職回数が5回以上という方は18%**を占めています。転職を繰り返す背景には、自分が本当に何を求めているのかが曖昧なまま、条件面だけで転職先を選んでしまうという問題があるのかもしれません。
出典:doda
まとめ
秘書の転職市場は、求人倍率だけを見れば決して楽観できる状況ではありません。しかし、それは「秘書」という職種名に縛られた場合の話です。
大切なのは、以下の視点を持つことではないでしょうか。
- 秘書経験で培ったスキルを「サポート業務」に限定せず、汎用的な強みとして捉え直す
- 職種名にとらわれず、自分の経験が活きるポジションを幅広く探す
- 年収や条件だけでなく、自分の志向やキャリア観との一致を重視する
転職は情報戦です。特に秘書のように専門性の高い職種では、自分では気づかない可能性を示してくれる存在が重要になります。従来の転職サイトで「秘書」と検索するだけでは、見えない選択肢が数多く存在します。
